傷病手当金は健康保険制度の中の給付金で「病気や怪我で働けなくなり給与がもらえない状態」の場合に『月間給与の約65%が休業4日目から最大18ヶ月間支給されるもの』です。さて、どのような人が対象でどのような手続きが必要なのでしょうか。見ていきましょう。
1 まずは公的健康保険制度についてのおさらい
公的健康保険制度と言うと何を思い浮かべますか?コクホとかシャホとか協会ケンポ・・・でしょうか。まずは、この枠組みをまず簡単におさらいしてみます。そんなことばっちりわかってる!傷病手当金について早く知りたい!という方は次の2項へお進みください^ ^
公的健康保険は大きく2つに分けられています。
まず1つ目、地域保険=俗にいう国保。地域保険は以下の3つの種類があります。
- 都道府県単位の「国民健康保険」(自営業者・非正規雇用の労働者・無職の人など)
- 特定業種の個人事業主のための「国民健康保険組合」(建設業・美容師・弁護士など)
- 75歳以上の人が加入する「後期高齢者医療制度」
2つ目の職域保険=被用者保険=俗にいう社保は主に4種類。
- 「全国健康保険協会(協会健保)」(中小企業の従業員の方)。
- 「組合管掌建国保険(組合健保)」(大企業の従業員の方)。
- 「共済組合」(公務員など)。
- 「船員保険」(大型漁船などの乗組員)
2つ目にご紹介した職域保険(社保)は、第一次世界大戦後の不景気対策として労使協調・国家産業を成長させることが目的で制定されたものだそうです。そのため国保にはない「扶養制度」というものがあります。所得額が少ない自分の家族を「自分の扶養者」として保険料を負担することなく健康保険に加入してさせることができるのです。他にも出産手当金・人間ドックの補助制度など安定して働くためのサポートが充実しています。(ちなみに業務が原因で発生した病気や怪我については労災保険で対応することになりますので、健康保険は使えません。)
それに対し1つ目にご紹介した地域保険(国保)は、世界恐慌時の農業者や漁業者の医療費負担軽減・保険状態の改善を目的に制定されたものです。そのため「扶養」の考えはなく、子供だろうが無職だろうが一定の保険料が必要です。
現在では公的健康保険と一言で括られていますが、制定された時期や目的など性質がだいぶ異なっていることがイメージされましたでしょうか。
2 傷病手当金の対象者
では、公的健康保険制度の全体像が頭に入ったところで傷病手当金の給付ついてお話を移します。
まず、どの種類の保険でも傷病手当金がもらえの?という問いかけから。。。
これに関しては話の流れでお気づきになられた方もいらっしゃるかもしれませんが、ざっくり2つに分けた保険のうち傷病手当金が給付される保険は、2つ目の職域保険(社保)と、特定の国民健康保険組合だけです。つまり国民健康保険(国保)にご加入の方は傷病手当金は支給されないということです。(そもそも仕組みがない)
これは、先にご説明いたしました、それぞれの保険の生まれた目的を振り返っていただけますと分かりやすいかと思います。
そして心身の状態面から見た給付対象基準ですが、病名による判断基準ではなく「一刻も早く療養・休息を取る必要のあると医師が認めた人」であり、なおかつ勤め先に休業に関する規則がなく休業したら給料が支給されない人や傷病手当金以下の給与しか支払われない人が対象です。
まとめると国民健康保険・後期高齢者慰労制度以外の保険にご加入の方で『直ちに休息が必要と診断されお給料の補償もない』という方は、傷病手当金の申請を念頭に入れたほうがいいということになります。
3 申請までの流れ
- まずは勤め先の休職(休業)に関する規則を総務課などで確認しましょう。会社によっては申請を代行してくれる会社もあります。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)、健康保険組合などが窓口となります。お持ちの保険証をご確認くださいね。
- 傷病手当診断書の作成を依頼。作成費用は保険が適応されるため1通300円です。病院に依頼する前に「◯月◯日〜◯月◯日まで」の診断書が必要なのか証明期間を明確に会社に確認しておきましょう。いつからいつまでのものかが分からないと病院でも作成できません。そして他の書類と同様、作成には少なくとも1週間はかかりますので、申請には余裕を持ったスケジュールを立てましょう。(注:未来の期日に関しての証明はできないという原則から、お渡しは診断書にご指定された証明期間が経過した翌日以降となります。
- 健康保険傷病手当金申請証と診断書、他添付書類もあればそれを合わせて申請先窓口へ提出します。
4ポイント
・休業が長引き退職することになったら、今入っている保険の任意継続を申請するか、国民健康保険に加入しましょう。任意継続は2年間続けることができますが、申請は退職後20日以内にしなくてはならないため注意が必要です。任意継続と国保、どちらがお得かは収入や家族構成、お住まいの自治体によって変わってくるので、退職前に役所の国民年金窓口で見積もりを出してもらい任意継続した場合の保険料と比較することがおすすめです。
・傷病手当金支給開始から1年6ヶ月までの期間は途中で退職しても支給を受けることができます。ただし、一度使うと同じ傷病名では一定期間使えなくなりますので注意が必要です。
・病気になった原因が明らかに労働条件によるものと考えられる場合には、労働基準監督署に労災認定を申請することもできます。退職しても労災認定がされていれば治癒するまで休業補償は受けられます。