就職というと「どんなお仕事にしようかな?」など、仕事内容やジャンルに注目が行きがちですが、「働き方」ということも最初に考えておいた方がいい大切な項目。
このページでは、一般求人と障害者求人のメリット・デメリットについて簡単に触れていきたいと思います。
障害者雇用とは
「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、従業員50人以上の民間企業は「ある一定数の障害者の方を、差別することなく合理的配慮を提供しながら雇用する枠」を設けています。これが「障害者枠」と呼ばれているものです。障害者手帳を所持している方が利用できます。
この障害者枠で働くことをオープン(障害開示)といいます。
これに対して、障害があることを勤め先に伝えずに「一般枠」でなんとか頑張る働き方をクローズ(障害非開示)といいます。
それぞれの働き方のメリット・デメリット
一般枠のメリット
- 障害者手帳の有無に関わらず、誰でも応募できる。
- 障害者専用求人よりも求人数が多い。
- 働き方が多様。フルタイム・パートタイムなど。
- 職種の幅が広く、専門職も多い。
- 診断や特性について、就職先に伝えなくてもよい。
- 経験を積み実績を出すことで、昇格・昇給する。
一般枠のデメリット
- 障害者の採用が前提ではないので、採用についても配慮についても比較的厳しく見られがち。
- 経験を積んでいくとリーダーシップを求められることもある。
- 残業が入ることがある。
障害者枠のメリット
- 障害について企業に伝えやすく、比較的採用につながりやすい。
- 勤務時間が週20時間という雇用形態もある。
- 障害について配慮を得やすく、特性を理解してもらえやすい。残業もないことが多い。
- 大企業やその系列会社が多く、安定している。
- 最初は契約社員からのスタートであることが多いが、数年後には正社員に登用されることもある。
障害者枠のデメリット
- 求人は都市部では多いが、郊外では少ない。
- 職種も軽作業や事務作業が多く専門職が少ない。職種によって求人数に偏りが大きい。
- 昇給しにくい。
近年は、障害者枠の給与や職種も一般枠に近づいてきているとの情報もあります。
職種だけでなくご自身に合った「働き方」を考えておくことは、無理のないライフワークバランスを保つために必要不可欠なこと。そして、一緒に就労サポートをしてくれる支援員さんや施設を選ぶ上でも重要な指標となってきます。
「実際に働いてみなければわからない!」という方は、ご自身の理想の働き方をイメージしながらも、まずはそれよりも負荷の小さい働き方からチャレンジしてみるのも一つですね。
また、一般企業ではなく就労移行支援事業所A型・B型、就労移行支援事業所などが今の状態にマッチしているということもあります。
これらを踏まえて主治医に相談の上、焦らず自身のペースで一歩を踏み出してみてくださいね。障害者生活支援センター(さいたま市)外部リンクも相談に乗ってくださいますよ。
企業と折り合いをつけるコツ
働かせていただく側、働いていただく側。それぞれ求めるものがありますよね。でも言葉にして言わないと伝わらない。伝え方も直球すぎると角が立つ。なかなか難しい問題です。
そこで、お互いに少しでも理解し合えるよう就労条件のポイントをまとめてみました。ご興味のある方はご覧ください。
障害者雇用時に企業が求める人材=「仕事で長く活躍してくれる人」
- 具体的にどのように配慮して欲しいのか?をきちんと企業に伝えられる人。=病識があり、自分のことをきちんと説明できる人。
- 企業も仕事を準備しているため、最低限の仕事はこなして欲しい。=仕事の拘束時間に耐えられる人。
- 勤め始めのうちは通勤勤務が基本。=通勤に耐えられる人。
- 採用した人に期待しています。=仕事をする意欲のある人。
雇用側に理解と配慮をして欲しいよくある事柄
- 短時間勤務から慣らしながら、勤務時間を延ばしていきたい。
- 繁忙期からの勤務スタートでなく、閑散期から少しずつ仕事に慣れていきたい。
- 満員電車の時間帯を避けた出勤時間にしていただきたい。
- 外来受診の日に仕事を休ませていただきたい。
- 声や視線・音などが支障となる場合、影響の少ない場所に配置して欲しい。
- 仕事上の相談相手や指示者を決めてもらって、混乱しにくい指示系統を作っていただきたい。
- 同時進行や割り込み業務が苦手な場合は、その旨会社に伝え、作業を単純化してもらいたい。
- 緊張や不安が強い場合、臨機応変な対応が必要でない作業にしていただきたい。
- 作業工程や業務内容が目に見える手順書を作成してもらいたい。
もちろん、すぐに双方が条件を全て受け入れられるわけはなく、適切なタイミング・適切な伝え方でお互いに理解し合い妥協点を探していくことと思います。
一人で抱え込まずハローワークの相談員さんや支援機関のスタッフさん、ジョブコーチなどに相談をして、一緒に調整を進めていきましょう。
また、就労し始めるとどんな人でも心身ともに疲れを感じやすいもの。診察では、ネガティブな変化もそのまま主治医に伝えましょう。
就労による生活スタイルの変化により、お昼の薬が飲み忘れやすくなったなど服薬管理が難しくなった場合などは必ず医師に相談しましょう。回数や飲むタイミングを調整できる場合があります。
参考文献:伊藤順一郎,働いて元気になる「障害者雇用」で働くためのガイド,NPO法人 地域精神保健福祉機構(コンボ),